
2026年9月29日(火)、「10年続く飲食店経営協会」第5回 月例会を開催しました。会場は、江東区東陽町の「炭焼やきとり はな 東陽町店」。この日のゲスト・高橋社長の会社が営むお店そのものです。2階の店内は、開始前からぎっしりでした。😊
足元の悪い中お越しいただいた皆さま、告知にご協力いただいた皆さま、そして営業前の貴重な時間と会場を快くお貸しくださった高橋社長・店長さん・スタッフの皆さま、本当にありがとうございました。話を聞いて顔を上げると、その答えが壁に貼ってある——そんな贅沢な回のレポートです。
「10年続く店」をつくるために
この会は、いかにして飲食店経営を末永く続けていくか——をテーマに掲げた、経営者の方とサポート業の方が垣根なく学び合う場です。2026年5月に立ち上がったばかりの、まだ生まれたての協会です。
飲食店で10年以上続くお店は、全体のおよそ1割と言われています。裏を返せば、9割が10年もたない。だからこそ、そこの力になることに意味がある——そう考えて立ち上げました。
私たちが目指しているのは、10年以上、成長し続ける飲食店経営をサポートできるプラットフォームになること。ビジョンは「日本一、飲食店経営が上手になる学び合いの場」。そして大切にしている理念が、「みんなで勝つ」ということです。一人で抱え込むのではなく、うまくいった人の知恵をみんなで分け合う。そのために、毎回の月例会では次の3つを大切にしています。
- 困っているときに、経営のやり方や必要な知識を知れる場になること
- 今までの考え方から「進化」すること
- 過去の成功体験から、一度抜け出してみること
そして第5回のテーマは、「江東区にしぼって8店舗、総売上3億円超!地域で勝ち切るドミナント経営とは!?」。ひとつの区に集中して店を重ねていく、その「勝ち切り方」を現場の言葉で聞かせていただきました。
第5回のゲスト —— 有限会社バラコーポレーション 高橋 伸郎 社長

今回ゲストとしてお迎えしたのは、有限会社バラコーポレーション 代表 高橋 伸郎(たかはし のぶお)氏です。皆さんからは親しみを込めて「のぶさん」と呼ばれています。
焼鳥の「炭焼やきとり はな」をはじめ、居酒屋、ラーメンと複数の業態を、江東区を中心にドミナント展開。現在8店舗、総売上3億円超。ご自身の店だけでなく、全国の飲食店へのコンサルティングも手がけていらっしゃいます。掲げているのは「お客様・取引先・スタッフ」の三方よしです。
「この辺りから、全部自転車で行けるくらいの場所に店舗があります」。冒頭のこのひと言が、この日のテーマをいちばん短く言い表していたように思います。
📍 今回の会場 —— 炭焼やきとり はな 東陽町店
バラコーポレーションの原点である焼鳥ブランド「炭焼やきとり はな」の一店で、2015年にオープン。炭火で丁寧に焼き上げる本格やきとりと、温かみのある空間で気軽に楽しめるお店です。扇橋店・菊川店とあわせて3店舗を構え、この日の看板・POP・メニューの話は、すべてこのお店の実物でした。
住所:東京都江東区東陽3-27-18 2F
電話:03-3646-6687
▶ 店舗情報(バラコーポレーション公式サイト) ▶ Googleマップで見る

聞き手は、協会理事の佐野 慎祐 氏。飲食専門のデザインを手がけている方です。形式は対談。デザイナーの目線から「そこ、もっと詳しく」と切り込んでいく掛け合いが、この日の大きな見どころになりました。
「2年頑張ったら店を出してあげる」——師匠と、10年後の景色

高橋社長の飲食人生は、行きつけの焼き鳥屋さんから始まります。会社勤めをしていたころ、通っていたお店のマスターに「焼き鳥屋になりたいんです」と相談した。返ってきた言葉が、これでした。
「2年頑張ったら、店を出してあげる」
その言葉どおり、修行を経て地元にお店を出していただく。そしてオープンのとき、師匠から次の言葉をもらいます。
「10年頑張ったら、景色が変わるよ」
「じゃあ10年やってみます」。決して楽ではない条件で、ひたすら焼き場に立ち続けたそうです。支えは「どんな景色になるのか見てみたい」という気持ちだったと。
ところが、ちょうど10年を迎えたころ、師匠が亡くなられます。当時お店は2店舗。会社の中身を開けてみると、多額の借入が残っていました。「景色、変わりましたよ」と笑いながら話されましたが、会場は静まり返っていました。
そこで高橋社長は、ほぼ二つ返事で「僕が代表をやらせていただきます」と引き受けます。
「これだけご縁をいただいて、お店をやらせていただいて、何のご恩返しもしていないと思ったんです。師匠に習ってきたことをそのまま続けていけば、10年の実績があるんだから大丈夫だろうと。正直、そこまで深く考えていなかったのが本音かもしれません」
ここから何を学べるか
続ける理由を持っている人は、意外と少ないものです。高橋社長の場合、それは「10年後の景色を見たい」という師匠との約束でした。数字の目標だけでは、苦しい年に折れてしまう。あなたがお店を続ける理由は、売上以外の言葉で言えますか。
売っているのは焼き鳥ではなく、「帰ったあとの喜び」
師匠が教えてくれたことは、たった1点だけだったそうです。
「僕たちは焼き鳥屋をやっている。でも、僕たちが売っているのは焼き鳥やビールじゃないんだよと。お金をいただいて、おしまい、ちゃんちゃん——じゃない。お客様が帰ったあとに『幸せだったな』『また明日も頑張ろうかな』と思える、その喜びを売っているんだって習ったんです」
「人って、幸せで豊かな人生を送りたいというストーリーの中を生きているわけですよね。でも、ストーリーどおりに歩けている人なんていない。だからこそ飲食店が寄り添って、お客様のストーリーの1ページになれる店をひとつずつ作っていきたい——それが師匠の言葉でした」
この教えを受け継いで、高橋社長がもうひとつ決めたことがあります。独立したい人だけを採用するということです。
「社員さんを募集するときは、必ず『独立願望ありますか』と聞きます。社員としてお金を稼ぎたい、ではなく、いずれ全部を背負って自分の店をやりたい。そういう人たちを集めてスタートしたんです」
その仕組みが、のれん分け制度。実際に、かつて店長を務めていた方が、10年たったいま社長になり、同じ「やきとり はな」の看板で店を営んでいます。
ここから何を学べるか
焼き鳥を売っている店は、焼き鳥の値段で比べられます。「帰ったあとの喜び」を売っている店は、比べられにくい。そして採用の入口で「独立したいか」を聞くのは、辞めない人を探すのとは真逆の発想です。いずれ巣立つ人ほど、本気で店を自分ごとにしてくれる。
学び続けた人は、変われる ——コロナ禍と「繁盛飲食店ネットワーク」
コロナ禍は、高橋社長のお店にとっても「本当に潰れそうだ」と思うほどの危機でした。その時期に支えになったのが、「繁盛飲食店ネットワーク」というコミュニティです。
売上アップの方法、スタッフとの向き合い方、お客様との向き合い方——それをマーケティングの視点で学び、実際に店でやってみて、結果を報告し合う。報告の基準は「前年比120%以上」など、はっきりしています。
「学んだことを実直にやっていっただけなんですけど、学び続けたら、ずっと上がっていったんです。これは面白いなと」
やがてコミュニティのリーダーを任され、コロナ禍の最中にも北海道から九州まで、全国に勉強会で出向いたそうです。
ここで高橋社長は、少し照れくさそうに昔の自分の話をされました。「若いころは、とにかく尖っていた。スタッフにも厳しかったし、それが当たり前だと思っていたんです」。それが変わったきっかけは、とてもシンプルな気づきでした。
「人はね、優しい人と楽しい人が好きなんですよ」
「だったら僕も、優しい人と楽しい人になりたいなと思って」。仲間の売上が上がった報告を聞くのが楽しみになり、少しずつ人間が丸くなってきた——そう笑っていらっしゃいました。
ここから何を学べるか
危機のときにいちばん効くのは、学んで、やって、報告し合える仲間がいることでした。学び続けることは、売上だけでなく経営者その人を変えます。この協会が「みんなで勝つ」を掲げている理由も、まさにここにあります。
10年続く店に、必ずある「3つのこと」
佐野理事から、この会の核心を投げかけました。「10年続く店と続かない店、何が違うんですか」。答えは3つでした。
- マーケティングを入れている
- ファンを作っている
- お客様に求められているものに合わせている
ひとつ目について。「『俺はマーケティングなんか入れてねえよ』っていう焼き鳥屋のおやじさんも、実はめちゃくちゃマーケティングを入れてるんです。気づいていないだけで」。
ふたつ目は、常連とファンの違い。「違いは、たった1点だと思っています。新しいお客様を連れてきてくれるかどうか。ファンは、お店の代わりにマーケターになってくれる人なんです」
そして3つ目が、いちばん耳が痛いところでした。
「一時期、タピオカをやろうと思って、すごく準備していたことがあるんです。でも、これ本当に求められてるのかなと思って、娘に聞いたんですよ。そうしたら『私は別に行かないと思う』って(笑)。ああ、なるほど、と。やめました」
この東陽町店の物件選びも同じ考え方です。駅の周りはサラリーマンの多い立地。「『10人いいですか』という声がかかる場所だと思ったので、団体が入れる広さがないと厳しいと。普段は小さな店が多いんですけど、ここは広い箱を選びました」。
さらに、この店には焼き鳥をほとんど頼まない、二次会のお客様も流れてきます。「最初は『焼き鳥屋なんだから焼き鳥を食べてくれよ』と思っていたんです。でも、求められているのはそこじゃないんだと。だったら、そこに合わせればいい」。
ここから何を学べるか
3つ目の「求められているものに合わせる」は、自分のやりたいことを一度横に置くということです。求められているものは、自分ひとりでは分からない。だからこそ、家族やスタッフ、外の人の声を聞きにいく。あなたが最近「やめた」アイデアは、何ですか。
マーケティング5つの法則(1)——リストを取り、再来店の仕組みを入れる
ここからが、この日のいちばんの「持ち帰りどころ」です。全国の飲食店と話すなかで、高橋社長は気づいたそうです。売れている店も、超大手も、絶対にこの5つをやっていると。
まずひとつ目は、リストを取ること。
「ラーメン屋さんで『お名前、住所、電話番号を教えてください』と言われたら、気持ち悪いですよね(笑)。でも今はLINEでリストが取れる。メールは開かない人が結構いる。でもLINEを開かない人は、今の日本にはほとんどいない。うちのお袋でさえ使いこなしてますから」
ふたつ目は、取ったリストに再来店の仕組みを入れること。クーポンや新メニューのお知らせを、必ず流す。ここで紹介されたのが、売上の公式でした。
売上 = 客数 × 客単価 × リピート
「売上を1.3倍にしたいとき、お客さんを1.3倍にしようとすると大変です。でも客数1.1倍、客単価1.1倍、リピート1.1倍なら? 1.1×1.1×1.1で1.33倍。こんな簡単なことないでしょう」
おもしろかったのは、LINEと紙のクーポンを二重にする工夫です。LINEに登録してもらって特典をつけ、さらに帰りには紙の割引券をお渡しする。「あの店良かったな」と思った人は、紙のクーポンを捨てません。そこへ2週間ほどたったころ、LINEで「次回ご来店の際は……」と届く。
「手元にクーポンが2つあると、どっちも使わないと損した気分になるんですよ。それに、1回届くだけでは人はなかなか動かない。繰り返し届くうちに、頭に残っていく」
ここから何を学べるか
公式で見れば、客数は3つのうちの1つでしかありません。リストと再来店の仕組みがない店は、毎月ゼロから集客しているのと同じです。今日来たお客様に、明日連絡する手段を、あなたのお店は持っていますか。
マーケティング5つの法則(2)——看板・POP・メニューを作り込む
3つ目の法則は、看板・店内POP・メニューの作り込み。ここで佐野理事が「ここは私の本業なので、細かく聞きたい」と身を乗り出しました。デザイナーの目から見ても、このお店は勉強になる仕掛けだらけなのだそうです。

まず、お店の外。置ける場所が限られているので大きなものではありませんが、A看板は写真だけの作りにしているそうです。「通行人の方が見た瞬間に、メニューが目に飛び込んでくる。それで『だいたいこういう店なんだな』と分かる」。
営業中になると、提灯に明かりが入ります。そこに書いてあるのが「一口百円 とろけるレバー」。値段のインパクトで、思わず入ってみたくなる仕掛けです。
そして店内。ここで種明かしがありました。
「壁に貼ってあるPOPには、焼き鳥のことはほぼ書いていません」
「うちは焼き鳥屋さんです。焼き鳥は、黙っていても頼んでくださるんですよ。だから壁のPOPを見たときに、『焼き鳥じゃないものもあるんだ』と気づいてもらう。海鮮だったり、ちょっとした一品だったり。『こっちも頼んじゃおうかな』という作りにしているんです」
さらに、どの席に座っても、だいたい同じPOPが見えるように貼ってある。どの席のお客様にも、同じものを頼んでいただけるように、です。
ここで、会場に問いかけがありました。「お店に行って、メニューブックを開く人と開かない人、どっちが多いと思いますか」。
私たち飲食関係者は、勉強も兼ねてまず開きます。ところが高橋社長の実感では、4人に3人、75%ほどの人はメニューを開かないそうです。
「10人で焼肉屋さんに行って、幹事がメニューを開いて考えているうちに、後輩が壁を指さして『先輩、この限定のやつお願いします』。みんな壁を指さして注文し始めるんです(笑)」
「だから、メニューを開かなくても注文できる状態にしておく。もし壁に貼ってあるのが、メニューの中でいちばん高いものだけだったら、どうなりますか?」

POPの使い方として、もうひとつ紹介されたのが「人気メニューベスト5」です。人は人気のものが好き——これも心理です。ただし、仕掛けがあります。
「これ、全部注文していただければ、お店の商品をひととおりコンプリートできるように作っているんです。本当に売れた順に並べているわけじゃない。でも嘘もついていません。店長の中での人気メニュー、つまり店長のおすすめなんです」
まずお刺身、そして焼き鳥屋さんらしく串のおまかせ。そこに入ってくるのが、この店の名物「アスパライス」。ご飯ものでスープもついている。そして、いちばん単価の高い一品も入っている。前菜から締めまで、上から順に頼めば、一回の来店が自然に組み立てられるようになっているわけです。
ここから何を学べるか
看板は「何の店か」を一瞬で伝え、POPは「看板商品以外」を売り、ランキングは「こう楽しんでください」と提案する。役割が違うのに、多くの店は全部に同じことを書いてしまっています。あなたのお店の壁は、看板商品の「次の一品」を売っていますか。
マーケティング5つの法則(3)——Googleと、人間の心理
4つ目は、Google・SNS対策。Instagram、TikTokなど、お店に合ったものを選んで入れていく。この東陽町店は、Googleの口コミがおよそ1000件あるそうです。
「Googleを意図的に入れているので、『東陽町 焼き鳥』『東陽町 居酒屋』と検索していただいても、上位に出てくるようになっています」。いわゆるMEOです。
もうひとつ例に出されたのが、人形町にある同社のラーメン店。ラーメン店がひしめくエリアで、昨年12月のオープンから8ヶ月で、Googleの口コミを約550件集めたそうです。
「口コミの数だけなら、もっと多いお店もあります。それでも、うちが上に出てくる。短期間で集めたことが評価されているんだと思います。1年かけて500件集めるのと、短い期間で500件集めるのとでは違う。店長たちが意図的に頑張ってくれた成果です」
そして5つ目が、人間心理を入れること。
「長方形のものって、皆さん必ず上から下へ見るんですよね。いわゆるZの法則です。それから、人は数字に惹かれる。人気のものが好き。ベスト5も、メニューを開かない人のための作りも、全部この心理に基づいています。そうすると、記憶に残るんです」
大手との違いについても。「大手のハンバーガーチェーンはリストなんて取っていない、と言われます。でも名前を聞いただけで、何が食べられるかまで頭に浮かぶでしょう。大手は広告費で、皆さんの記憶に入り込めるんです」
「僕らみたいな小さな店は、それができない。だから、法則で戦うんです」
ここから何を学べるか
5つの法則は、どれも広告費をかけずに今日から手をつけられるものばかりです。高橋社長いわく「感覚でやってきたことを、あとからロジックで整理したもの」。まずは5つのうち、自分の店でいちばん手薄なものをひとつ選ぶところから始めてみてください。
ドミナントは、あとから名前を知った
テーマの「ドミナント経営」。さぞ緻密な戦略が——と思いきや、答えは意外なものでした。
「ドミナントという言葉を知ったのは、6店舗目くらいなんです。恥ずかしながら。『なんでドミナントでやってるんですか』と聞かれて、『ドミナントって何?』と聞き返したくらい(笑)」
「近くに店があると、食材が余ったときに融通できる。スタッフが足りないときも助け合える。自転車で全部回れるのがすごくいいんです。感覚でやってきただけで、ロジックはあとから付いてきたんです」
転機は、顧問の先生からのひと言でした。「このままドミナントで突き抜けると、何かが生まれるよ」。何が生まれるんですか、と聞くと——「地域での存在感、権威性が生まれる」。
実際、店を重ねていくうちに、地域の飲食店同士の横のつながりが広がっていきました。地元で繁盛店を作っている若い経営者に自分から連絡して、情報交換を申し込んだこともあったそうです。
「権威性といっても、偉そうにするという意味じゃなくて。小さいけれど、業界のリーダーとして背中を見せる。それができるのも、ドミナントでやってきてよかった点のひとつだと思っています」
ここから何を学べるか
ドミナントの本質は、「近くにいるから助け合える」という、ごく現場的な合理性でした。それが積み重なると、地域で「あの会社」と呼ばれる存在感になる。2店舗目を出すなら、いまの店から自転車で何分の場所か。そこから考えてみる価値は大きいはずです。
現場を抜ける勇気 ——「A君B君」で人が育つ
店が増えれば、社長が全部の現場に立つことはできません。高橋社長が完全に現場を抜けたのは、約3年前。それまでは本店でずっと焼き鳥を焼いていました。
抜けると決めた理由は2つ。「ひとつは、お店にいる時間のぶん、会社のことに時間を使えないこと。もうひとつは、僕をいつまでも頼りにしていたら、店長たちが成長しないということです」。
とはいえ、いきなり抜けたらお客様が離れてしまうかもしれない。そこで1年かけて、少しずつ。「週2日しか出ないよ、と自分が出ない日を少しずつ増やしていったんです。『今日マスターいないの?』と言われる時期を、店長がひとつずつクリアしてくれた」。
その後、店長が代替わりすることもありました。それでも店が回り続けたのは、次の人がちゃんと育っていたから。その仕組みが「A君B君」です。ここで、この東陽町店の店長さんがマイクを握ってくださいました。

「まず店長が、A君を徹底的に教えます。自分の代わりになるくらいまで。A君が育ったら、今度は新しく入ったB君をA君が教える。店長はそれを見守ります」
「B君がA君の8割くらいできるようになったら、今度はB君が新しいC君を教える。A君はB君を見守る。そうすると、B君はいつの間にかA君になっているんです。A君が2人いる状態になる。玉突きみたいに、どんどん育っていく」
そして、ここが肝心だと高橋社長が付け加えました。
「当たり前のことなんですけど、これがなかなかできない。なぜかというと、『お前に教えるくらいなら、俺がやった方が早い』ってなるじゃないですか。それを我慢して、見守る。そこを実直にやってくれているんです」
ここから何を学べるか
「A君B君」の本質は、教える仕組みというより「見守る仕組み」です。そして教える側に回った人が、いちばん成長する。「俺がやった方が早い」と思った瞬間が、手を止めて見守るタイミングなのかもしれません。
理念は、トップの言葉で伝える ——「まみむめも」の力
8店舗のスタッフに、どうやって会社の大事にしていることを伝えているのか。佐野理事の問いに、高橋社長はこう答えました。
「理念経営は本当に大事だと思っています。でも、かっこいい言葉を紙に掲げて終わり、ではなくて。トップが自分の言葉で伝える。僕の思いが店長に、店長の思いがスタッフに伝わっていく。それが理念になっていくんだと思います」
そのうえで、スタッフにいつも伝えているのが「まみむめも」の力です。お店にとって大事なことは、人と付き合ううえでも大事なこと——という考え方です。
- 魔力 ——身なりで印象が決まる。「客単価を上げていくのに合わせて、制服を変えたんです。カジュアルなシャツで元気よく迎えて、お会計が高かったら『高いな』と思われてしまう。見た目で期待値を合わせるんです」
- 魅力 ——「あなたのお店の魅力は何ですか。あなた自身の魅力は何ですか」
- 夢力 ——「夢のない人に、人はついてきますか」
- メモ力 ——「人は翌日には9割忘れる。今日のお昼に何を食べたか、すぐ出てこないでしょう」。だからとにかくメモを取る
ここから何を学べるか
理念は、トップが自分の口で、何度も語る。そして「まみむめも」のように、現場で思い出せる短い合言葉に落としておく。あなたのお店のユニフォームは、いまの客単価に合っていますか。
価格が動く時代に ——「値下げしなくても、伝え方は変えられる」
終盤、佐野理事が投げかけたのは、いま多くの飲食店が頭を抱えている問題でした。仕入れ価格が動き続け、消費税の扱いも議論されている。価格をどう決めていくか。
高橋社長の答えは、「今までと同じでいいわけではない。お店のスタイルによって変えるべき」というものでした。
ひとつは、税込ではなく税抜で伝えることの検討。「ほとんどのお店が税込価格で見せていますよね。でも、それを税抜で伝えるようにすれば、自分たちも税金ときちんと向き合える状態を作れるかなと」。
もうひとつは、お店に来なくても買えることをしっかり伝えること。デリバリーやテイクアウトをやっていることを、マーケティングとしてきちんと発信していく。「お店に足を運ばなくても、ここの料理が買える。スーパーだけじゃないんだよ、と」。
そして、値下げについて。「値下げって、本当に値段を下げなくていいと思うんです。『実はこれ、この価格なんですよ』とちゃんと伝えられるかどうかが大きい」。価格改定をきっかけに客足が落ちてしまった大手回転寿司チェーンの事例にも触れながら、「目を背けないこと。自分にもそう言い聞かせています」と話されました。
客単価の高い高級和食店のオーナーは、消費税は「全く意識していない」と言いつつ、周りから自分の店がどう見えているかだけは意識している。「意識していないようで、ちゃんと意識しているんですよね」。
ここから何を学べるか
価格の問題は、つい「上げるか、据え置くか」の二択で考えてしまいます。でも高橋社長が示したのは、「伝え方」「売り方」「見え方」という別の軸でした。値段そのものを動かす前に、伝え方で動かせることがある。
これからの10年 ——「皆さんと一緒に、歩んでいきたい」
最後に、佐野理事が「次の10年で力を入れていきたいことは」と聞きました。
「今日こうして皆さんに集まっていただいて、何かをシェアできればと思ってお話ししてきました。カッコつけじゃなくて、皆さんのお役に、少しでも立ちたい。ずっとそう思ってきたんです」
「人が笑っていたり、そばにいてくれたりするのが、すごく好きで。この人たちのために何かしたいと、ずっと思ってきました。せっかく皆さんがこうして集まって、前を向いている。10年続く店を、これからも皆さんと一緒に歩んでいけたら、うれしいです」
会場からは、自然と大きな拍手が起きていました。
懇親会まで、大盛況






第2部の懇親会も、そのまま「炭焼やきとり はな 東陽町店」で🍢
勉強会のあとは、同じ会場で懇親会へ。まず出てきたのが、七輪で自分で炙るお通し。「突き出しが苦手な人も多い中で、テンションが上がるお通しを」——さっき聞いたばかりの話が、そのままテーブルに運ばれてきました。
続いて、提灯にも書いてあった「とろけるレバー」。「出てきたら、すぐ召し上がってください」とひと声添えて出てきます。そこから、まぐろとうにの小丼、つくね、ぎんなん、じゃがバター、そして名物のアスパライス。ベスト5に並んでいた一皿です。
話を聞いた直後に、看板も、提灯も、壁のPOPも、ベスト5も、実物で確かめられる。気づけば何人もの方が、自分の席から壁を見回していました。これ以上に説得力のある懇親会はありません。😊
勉強会の熱がそのまま続き、業態や立場を越えた相談や名刺交換が止まりませんでした。高橋社長や店長さんを囲んで質問を重ねる方、POPやLINEのリストを自分の店にどう当てはめるか語り合う方——あちこちで新しいご縁が生まれていました。
こうして第5回も、最後まで大盛況のうちに幕を閉じました。「10年続く飲食店経営」を、これからもみんなで一緒に。
そして、営業前の貴重なお時間に会場をご提供いただいたうえに、ご自身の歩みも、お店の仕掛けの種明かしも惜しみなく分かち合ってくださった高橋社長、実演してくださった店長さん、そしてスタッフの皆さまに、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
次回、第6回 月例会は2026年10月28日(水)15:30〜、会場はリダイン日本橋室町です。ゲストに株式会社29ON 米山 健一郎 氏、株式会社食縁舎 戸田 康利 氏のお二人をお迎えします。詳細とお申し込みは第6回月例会の告知記事からどうぞ。皆さまのご参加を、心よりお待ちしています。😊
▶ 登壇いただいたゲストの企業情報
有限会社バラコーポレーション(代表 高橋 伸郎 氏)/炭焼やきとり はな 東陽町店
公式サイト:https://hana-bara.co.jp/
