【第3回 月例会レポート】株式会社鶏ヤロー 和田成司社長に学ぶ、驚きの低価格業態で「10年成長を続ける」秘訣

第3回月例会の集合写真
第3回月例会にご参加いただいた皆さまと📸

2026年7月29日(水)、「10年続く飲食店経営協会」第3回 月例会を開催しました。会場は、新宿西口の「居酒屋それゆけ!鶏ヤロー!新宿西口店」。提灯がびっしり並んだ、あの熱気そのままの店内での開催です。😊

ご参加いただいた皆さま、告知にご協力いただいた皆さま、そして会場を惜しみなくお貸しくださった鶏ヤローの皆さま、本当にありがとうございました。今回は「笑いっぱなしなのに、メモを取る手が止まらなかった」という声を本当にたくさんいただきました。その空気のままお届けできるよう、レポートにまとめてみます。

TOC

「10年続く店」をつくるために

この会は、いかにして飲食店経営を末永く続けていくか——をテーマに掲げた、経営者の方とサポート業の方が垣根なく学び合う場です。2026年5月に立ち上がったばかりの、まだ生まれたての協会です。

私たちが目指しているのは、10年以上、成長し続ける飲食店経営をサポートできるプラットフォームになること。そして大切にしている理念が、「みんなで勝つ」ということです。一人で抱え込むのではなく、うまくいった人の知恵をみんなで分け合う。そのために、毎回の月例会では次の3つを大切にしています。

  • 困っているときに、経営のやり方や必要な知識を知れる場になること
  • 今までの考え方から「進化」すること
  • 過去の成功体験から、一度抜け出してみること

そして第3回のテーマは、「驚きの低価格業態で成長し続ける秘訣とは!?」。原価も人件費も上がり続けるこの時代に、あえて安さで真正面から勝負し、しかも伸び続けている会社があります。その中身を、包み隠さず聞かせていただきました。

第3回のゲスト ——「居酒屋それゆけ!鶏ヤロー!」和田成司社長

和田成司社長を迎えての対談
理事メンバーが次々と質問を投げかける対談形式で進行しました。

今回ゲストとしてお迎えしたのは、株式会社鶏ヤロー 和田 成司(わだ せいじ)社長です。ハイボール99円などの激安ドリンク・フードで知られる「居酒屋それゆけ!鶏ヤロー!」を展開し、114店舗突破・売上高45億円・総従業員数821名(平均年齢22歳)という規模まで駆け上がってこられた、いわゆる「センベロ業態」の代表選手です。

千葉県野田市のご出身。専門学校を卒業後、焼肉店で修業し、27歳で独立。4号店目でようやく現在のスタイルにたどり着き、そこからチェーン展開へ——という歩みです。この日は「16期目を走っている」とご紹介いただきました。

進行は、理事メンバーが和田社長に次々と質問を投げかける対談形式。台本らしい台本はなく、その場の疑問をそのままぶつけていくスタイルです。会場は終始笑い声に包まれていましたが、その笑いの合間に出てくる言葉が、いちいち鋭い。「これは笑い話じゃないぞ」と、皆さんの手元のペンが動き出す——そんな75分でした。

はじまりは、1本のムービー ——「本当に、一人ぼっちだった」

勉強会は、和田社長ご自身が制作された1本のムービーから始まりました。会場の全員が、しんと静まって画面に見入っていたのが印象的でした。

そこで語られていたのは、成功譚ではありません。お客さまが来ない店。離れていく従業員。エアコンが壊れて寒い、閉店後の店内。ワンオペで立ち続けながら、「俺は本当は、何がしたいんだろう」と考えていた日々の話でした。

そして、10年後の自分を思い描いたときに最後に出てきた言葉が、「多くの仲間に囲まれていたい」だったといいます。「思っていたよりも、ずいぶん女々しい自分に気づいた。それなのに、目の前の仲間を全然大切にできていない自分にも気づいた」——本当に、そこからだった、と。

ちなみにこのムービー、撮影のときはご本人が自らマイクを持って語りかけているそうです。「うちはいろいろ動画を作るんですよ。作品が好きなんです」と照れながらおっしゃっていましたが、社内に何本もの映像が蓄積されているというのは、それだけで大きな資産だと感じました。

ここから何を学べるか

会社の物語を、経営者が自分の言葉で、自分の弱さごと語れるかたちにして残している。これは採用にも、理念の浸透にも、そのまま効いてきます。うまくいった話よりも、一人ぼっちだった夜の話のほうが、人の心には残る。自店の「原点の一日」を、あなたは誰かに語れる形にしていますか。

27歳で独立、そして「自分は天才じゃなかった」

ムービーのあとは、いよいよ生の経営の話へ。和田社長は27歳までにご自身で400万円を貯め、公庫から400万円を借り、自己資金800万円で焼肉店を開業されました。初日の売上は4,800円。一番はじめのお客さまのことを、今でも覚えているそうです。

ところが、そこからが長かった。2店舗目は牛角の跡地で勝負をかけたものの、「瞬殺されまして」。貯めた400万円は、わずか3か月ほどで溶けてしまったといいます。

次に挑んだのが居酒屋。煙の設備がいらない分、始めやすいと考えたそうです。ところがここで、和田社長らしいエピソードが飛び出しました。「すごく恥ずかしいんですけど、僕、当時サーモンの刺身が好きで。サーモンのお店をやったらいいじゃんって思ったんですよ」。

結果は——「今日なに食べに行く?」「サーモン食べに行こうよ」とは、誰も言わない。ニーズがないことに、ワンオペの店内で気づいたそうです。従業員を雇うお金もなく、月商はおよそ120万円。そこから1年半、もがく日々が続きました。

「27歳で起業したとき、僕は自分のことを天才だと思ってたんですよ。でも30歳で1.5店舗。貯金もないし、借金まみれで。ああ、自分は天才じゃなくて、普通より下なんだって、そこでやっと受け入れました」。会場が、静かにうなずいた瞬間でした。

ここから何を学べるか

「自分が好きなもの」と「お客さまが求めているもの」は、まったく別物です。好きだから売れる、はほぼ成立しない。そしてもう一つ、和田社長が越えたのは「自分は特別だ」という思い込みでした。自分を普通だと認めた瞬間から、気合ではなく仕組みで勝つ発想が始まります。この転換点こそが、114店舗の出発点でした。

「うちの店長みたいになりたくないですもん」——理念が生まれた日

25年前のスライドを前に語る和田社長
「大人になるなら店長になろうと決めた。今度は僕が、そんな店長をつくります」——25年前の写真とともに。

この日いちばん、会場の空気が変わったのが「企業理念」のお話でした。

「正直、はじめのころは企業理念なんて1円にもならないと思っていました」と和田社長。ところが、あるとき自店のアルバイトの子に、こう言ったそうです。「フリーターやってるんだったら、うちで店長や社員として働けばいいじゃん」。

返ってきた答えが、これでした。

「嫌ですよ。だって、うちの店長みたいになりたくないですもん」

「僕、その瞬間に『何のために店をやってるんだっけ』って、振り返ったんです」。

和田社長は、ご家庭の環境が決して恵まれていたわけではなかったと率直に話してくださいました。それでも高校生のとき、アルバイト先の焼肉店の店長がかっこよくて、楽しそうだった。「こんな大人になりたい」と思った。だから焼肉店の店長になったし、焼肉店を広げたいと思った。

「なのに、僕のところで働いている社員や店長は、若い子から見てダサかった。だから『和田さんみたいになりたくない』って思われていたんです」。この日一番、和田社長が真剣な顔をされた場面でした。

スライドに映し出されていたのは、25年前の一枚の写真と、こんな言葉です。

25年前
なんとなく始めた焼肉屋のバイト。店長は楽しそうだった。
大人になるなら店長になろうと決めた。
今度は僕が、そんな店長をつくります!

飲食業界の「3K」を、別の「3K」に塗り替える

そこで和田社長がたどり着いたのが、「この業界には、WIN-WINが足りない」という結論でした。掲げている想いは「世の中にWINWINを注ぐ」。この日、和田社長が着ていらしたTシャツにも、大きく「WINWIN=3K」とプリントされていました。

飲食業界は長く「きつい・汚い・給料が安い」の3Kと言われてきました。それを、働く人と会社がWIN-WINになることで、「かっこいい・稼げる・夢が叶う」の3Kに書き換える。「そういう業界になるんじゃないかな、と思って。そういう思いで今、事業を進めています」。

ここから何を学べるか

理念は、額縁に飾るためのものではありません。和田社長の場合、アルバイトの一言という「痛み」から生まれています。だからこそ強い。そしてここには、経営者にとって耳の痛い問いが含まれています——あなたのお店の店長は、若いスタッフから「ああなりたい」と思われているでしょうか。採用難の本当の原因は、求人媒体ではなく、そこにあるのかもしれません。

現金20万円からの再起 ——「価格系居酒屋」という発明

1年半のどん底から抜け出すきっかけは、意外なところから訪れます。お肉の取引先の社長が片手間でやっていた居酒屋が、あまりうまくいっていない。「お前、これ貸すからやってみないか」と声をかけられ、二つ返事で引き受けたそうです。

そのときの手元の現金は、わずか20万円。ホームセンターでプラ板を買ってきて、自分で看板を作りました。「お客さんが来なかったから、逆に時間だけはあったんですよ」と笑っておられましたが、その時間で考え抜いたのが、この一手でした。

ハイボール50円。ドリンク99円から。そして、その価格を看板にドーンと書く。

「当時、価格系の居酒屋ってなかったんですよ」。今でこそ「〇〇円均一」の看板はどこにでもありますが、当時の居酒屋業界で、価格そのものを最大の看板メッセージに据えた店はほとんどなかった。和田社長ご自身が「価格系居酒屋」と呼んでいるこの発想が、ここで生まれます。

雪の日の1号店、そして25日間で750万円

その1号店は、埼玉県の松原団地駅。「今でも覚えてますけど、2月4日にオープンして、その日、雪が降ったんですよ。本当についてない男は、とことんついてないなと思いました」。

ところが——開店の30分前から、15人ほどが並び始めた。「その日も次の日もオペレーションが回っていなくて。そもそも『卓番を決めなきゃいけない』ということを、やってみてから知りました」。それでも、2月28日までの25日間で、売上は750万円。「最後に満席になっている姿が見たい」と思って打った一手が、店を、そして会社を救いました。

ちなみに、店名がのちに変わったのにも理由があります。当初は「鮭」を掲げた店名でしたが、サーモンの国際価格が高騰し、直撃を受けたのです。「サーモンが高騰して、一番打撃を受けたのは、たぶん俺だと思う」。このとき「原価高騰に苦しむ居酒屋店主」としてメディアに初めて取り上げられたというのですから、なんとも味わい深い話です。そこで「それゆけ!鶏ヤロー!」へ。今のかたちが始まりました。

ここから何を学べるか

注目したいのは、お金がなかったからこそ、価格という一点に全部を賭けられたことです。20万円では内装も什器も変えられない。変えられるのは「何を、いくらで、どう伝えるか」だけ。制約が、逆に一点突破のコンセプトを生みました。「うちには何がないか」ではなく「残った一枚のカードで何ができるか」——苦しいときほど、この問いが効いてきます。

立地は「コピー&ペースト」——大学のある駅から、ターミナルへ

では、そこからどうやって100店舗超まで広げたのか。ここで語られた出店戦略が、実に明快でした。

松原団地の1号店が当たった理由は、はっきりしていました。近くに獨協大学があり、学生さんが来てくれたからです。ならば——と和田社長が取った手が、これです。

「コピー&ペーストしよう、と思って。大学のある駅と、大学の数と、学生数を調べました」

次に出したのは、学生数3万人規模の大学があるエリア。そうやって「大学のある駅」を一つずつ埋めていきました。そして家賃100万円という、当時としては思い切った物件で挑んだのが高田馬場駅。決め手は、ビールメーカーの調査で「日本で一番お酒を飲む学生は早稲田大学生らしい」と知ったことだったそうです。「高いなと思ったんだけど、まあ、売れましたね」。

これが初めてのターミナル駅出店となり、以降は新宿・渋谷といったターミナル駅中心へ。渋谷などでは複数店舗を集中させるドミナント展開も進めています。もっとも売れている渋谷道玄坂の店舗では、月商2,500万円規模に達することもあるといいます。

ここから何を学べるか

当たった1店舗を、「運が良かった」で終わらせず、当たった理由を要素に分解して、同じ条件の場所を探しにいく。「学生が多い駅」という一つの変数を見つけたからこそ、次の出店が博打ではなくなりました。あなたのお店が今うまくいっているとしたら、その理由を「調べられる数字」に置き換えられるでしょうか。そこまで落とせたとき、はじめて2店舗目の再現性が生まれます。

加盟金50円 ——「マネタイズを、遅らせる」フランチャイズ戦略

鶏ヤローの成長を語るうえで外せないのが、フランチャイズ(FC)です。ここでも和田社長の発想は、業界の常識と正反対でした。

直営がまだ5〜6店舗というタイミングでFC募集を開始。そして、当時の加盟金は「50円」でした。会場から思わず声が上がります。

背景には、和田社長ご自身の原体験がありました。独立当時、FCへの加盟を検討したことがあったものの、「とにかく高すぎる」と感じたそうです。「日本のFC市場って、まだ30〜40年くらいしか歴史がないんですよ。全然発達していない」。有名チェーンでも本部と加盟店の訴訟が絶えないという現実も見てきました。「無駄な失敗を、させない方がいい」——その思いが、まずあった。

そこにヒントを与えたのが、ある書籍にあった「マネタイズを遅らせる」という考え方だったといいます。オセロで言えば、まず四隅だけを押さえておく。そして数が広がってから、収益化する。

「加盟金を50円にして、仲間を集めますよね。儲かったら、その50円を見直していけばいい」。実際、現在の加盟金は数万円規模まで引き上げられています。それでも他社と比べれば破格です。仕入れなど、本部が価値を提供できる部分は他にもある。「そういうことを、飲食業界のFC市場はやっていなかった。それをやった、というだけです」。

ビッグマックも、テキーラボタンも「現場」から生まれた

加盟店との関係性も独特です。「本部とOFC(スーパーバイザー)」という上下ではなく、横並びの仲間。和田社長はこう言い切ります。

「マクドナルドのビッグマックだって、本部じゃなくてフランチャイズが作ったんですよ。だからうちも、どっちかというと『おい、フランチャイズ。早く鶏ヤローをもっとブラッシュアップしろよ』っていう感覚です」。

実際、鶏ヤローの名物である「テキーラボタン」(押すとテキーラのコールが鳴る仕掛け)も、FC加盟店の方が開発したものだそうです。「それいいなって言って、みんなで見て。で、俺が商標登録を取る。まあ本部ですかね」——会場が沸きました。

ここから何を学べるか

ここには、多店舗化を考えるすべての方へのヒントがあります。入り口のハードルを下げて仲間を増やし、価値が出てから対価をいただく。そして、良いアイデアは本部から降ってくるものではなく、現場から上がってくるものだと信じ切っていること。「本部が正しい」という前提を捨てられるかどうかが、組織が伸びるかどうかの分かれ目なのかもしれません。

客単価2,000円で、なぜ成り立つのか ——「わかりやすさ」の経営

ここで、会場の誰もが聞きたかった核心に話が及びます。なぜ、その安さで成り立つのか。

和田社長がまず示したのが、チェーン展開の「線引き」でした。「チェーン展開している居酒屋の99%は、客単価2,500円以下なんですよ。2,500円を超えて100店舗以上を展開できているのは、焼き鳥の大手さんくらいじゃないですか」。だからこそ、2,500円以下に収めることが多店舗化の条件だ、と。

そして鶏ヤローの客単価は、そこをさらにくぐって約2,000円。原価率は28%だといいます。「まあ、薄利多売なんだと思う。だからお客さんが来なくなったら、瞬殺で死ぬから」。笑いながら、しかしはっきりとリスクも語ってくださいました。

企業理念は、短く。——キリスト教が広まった理由

低価格の話は、そのまま「わかりやすさ」の話につながっていきます。

「企業理念を、長くしがちな会社ってあるじゃないですか」と和田社長。「『主体性を持って仕事をして、やりがいと価値を高め、夢・目標を達成する』——これ、覚えられないじゃないですか。でも『WINWIN=3K』なら覚えられるんですよ」。

そしてこう続けられました。「宗教って、世界中に何万とあるんですよ。なんでキリスト教だけあれだけ広がったか。あいつら、絵にしたからなんです。字が読めない人でも見れば分かる。だから、伝えたい思いっていうのは、わかりやすくないとダメなんだと思う」。

この「わかりやすさ」は、実は経営のあらゆる場面で徹底されています。価格を看板にドーンと出すのも、理念を短い記号にするのも、根っこはまったく同じ発想です。

そして理念は、掲げただけでは浸透しません。鶏ヤローでは、入社後に和田社長ご自身が理念講習を定期的に実施し、朝礼でも唱和。さらに「どの店舗が一番素敵な朝礼をしたか」を表彰するという取り組みまであるそうです。「いろんなところに、この言葉をちりばめる。それが大切かなと思います」。

ここから何を学べるか

低価格業態が成立するかどうかは、値付けだけの問題ではありません。客単価2,500円という業界の「壁」を知り、そこから逆算して業態を設計する。そのうえで、価格も理念も0.2秒で伝わる形にまで削り込む。「うちの理念、社員は暗唱できるだろうか」——今日すぐに確かめられる問いです。

採用費ゼロ ——お客さまが、スタッフになる店

鶏ヤロー店内に掲示されているポスター
会場となった店内の掲示より。スタッフを守る姿勢が、そのまま店の言葉になっています。

人手不足は、いま業界共通の悩みです。ところが和田社長からは、耳を疑うような言葉が返ってきました。

「うちの会社は去年、アルバイトの募集に1円もお金をかけていないです。全店舗で」

会場がどよめきました。ではどうやって人が集まるのか。答えは「お客さまが、アルバイトになる」。店内の掲示や紙一枚の呼びかけを見て、常連のお客さまがそのまま働き手になる。そして、全従業員の平均年齢は22歳という若さです。

ここには、あの理念がまっすぐ効いています。「若者のお酒離れ・居酒屋離れを防ぐ」というミッションを掲げ、実際に若いお客さまが集まる店をつくった。その結果、お客さまとスタッフの層が重なったのです。

ちなみに、このミッションが生まれた経緯も正直に明かしてくださいました。あるとき働いているスタッフから「うちのお店って若い子ばかりで行儀も悪いし、こんなお店ちょっと嫌だな」と言われたのだそうです。そこで和田社長は、こう返しました。

「違うよ。今、若者はお酒を飲まないんだ。俺たちは、それを救ってるんだって」。

「まあ、後付けなんですけどね」と笑っておられましたが、会場は温かい笑いに包まれました。お酒を飲みながら夢を語り合う——そういう機会を提供しているのだ、と意味づけたことで、現場の景色が変わったのです。

ここから何を学べるか

採用費ゼロは、裏技ではありません。「若いお客さまが集まる店をつくる」という業態設計の、当然の結果です。集客と採用を別々の課題として扱っている限り、この構造は生まれません。そしてもう一つ。目の前の事実に、誇れる意味を与えるのは経営者の仕事だということ。「後付けでいい」——この一言に救われた方も多かったはずです。

AIは「評価」に使う ——会議もLINEも、ランキングにする

当日のディスカッションテーマ
当日のディスカッションテーマ。11項目を、順に掘り下げていきました。

今回、多くの方が身を乗り出したのがAI活用のパートでした。当日のディスカッションテーマにも、しっかり「AI活用と飲食経営について」が入っています。

鶏ヤローでは、生成AIを使って社内用のアプリを次々と内製しているそうです。しかし、もっとも会場が沸いたのは、こちらの使い方でした。

  • オンライン会議をAIに読み込ませ、「誰が一番発言したか」「誰が一番質の高い回答をしたか」をランキング化。会議が終わった直後に結果が出る
  • LINEグループのトーク履歴を書き出してAIに読ませ、「返信が一番早い人」をランキング化

店長会議でも週次会議でも、これを回しているといいます。「なんで、こんなことをするんですか?」という問いへの答えが、非常に和田社長らしいものでした。

「評価してあげる、ということが大切かなと思って。だから見える化する」

AIを効率化のためではなく、これまで評価されてこなかった働きに光を当てるために使っている。会議で真っ先に手を挙げる人。LINEにすぐ返す人。これまで「なんとなく助かるな」で終わっていた貢献が、数字になって表彰される。これはそのまま、あの「WINWIN」の実装です。

ここから何を学べるか

AIの導入というと、つい「人を減らす」方向に考えがちです。けれど鶏ヤローの使い方は逆で、「人を、ちゃんと見る」ための道具になっています。しかも使っているのは、会議の録音とLINEの履歴という、どのお店にもすでにあるデータだけ。特別なシステム投資は要りません。「うちの店で、いま誰も評価していない頑張りは何だろう」——そこから始めれば、明日にでも試せる取り組みです。

失敗だらけ ——「バットを振った数に、ヒットは比例する」

勉強会の会場の様子
会場は熱気いっぱい。皆さん前のめりで聞き入っていました。

「最近チャレンジして、うまくいかなかった業態はありますか」という質問に対する答えが、会場をどっと沸かせました。

「もう失敗だらけなんで、ありすぎて分かんないですよ」

実際に、名前を挙げて振り返ってくださった業態がいくつもありました。焼き鳥の別業態も、「焼肉 我が家」という店も、うまくいかなかった。「我が家」については、こんな冷静な分析もありました。「昔ながらの香ばしい焼肉屋さんがコンセプトだったんですけど、香ばしさって年月をかけて出るものじゃないですか。うちはめちゃくちゃ新しい。それに、オープンして3日後に気づいた」。

それでも挑戦をやめない理由を、和田社長はこう表現されました。

「僕らの周りの飲食の社長さんたちも、みんなバットをバッと振ってる振った数にヒットの数は比例するから、これはしょうがないのかなって。大谷だって3割ですから」。

そしてもう一つ、印象的だったのが業態名についてのやりとりです。「『それゆけ!鶏ヤロー!』だって、ダサいじゃないですか。でも100店舗くらいになったから、いいって言われるんですよ。モーニング娘。だって、名前だけ聞いたらキモいじゃないですか。だから、勝てば官軍なんです」。

ここから何を学べるか

失敗の数を隠さない経営者は、強い。致命傷にならない範囲で打席に立ち続け、外れたら3日で認めて次へ行く。その速さこそが、和田社長の強さの正体でした。そして「勝てば官軍」——ネーミングやコンセプトの是非を会議室で延々と議論するより、まず出して、勝ってしまえばいい。この割り切りは、多くの方にとって背中を押される言葉だったはずです。

本部は、家賃5万5千円のボロ事務所で

売上45億円、114店舗。それだけの会社の本部が、どんなオフィスなのか。ここでも会場は驚かされました。

「うちの事務所、ストリートビューで見てもらったら分かるんですけど、ボロなんですよ。家賃、税込5万5千円です」

2階建ての、いわゆる掘っ立て小屋。最寄り駅は徒歩5分ですが、その駅は交通系ICカードが使えないのだとか。ここまで来たのには、明確な理由がありました。

若い頃、地元・名古屋に質素な本社を構えたまま大きくなった企業の話を知って、「超かっこいい」と思ったそうです。「働いている子たちからしたら、本部の人間がスマートな港区とかにオフィスを構えていたら、『俺たちが稼いだ金じゃないか』って思うじゃないですか。僕、そういうのが嫌いなんですよ」。

ただ、さすがに本部スタッフが10人ほどになり、手狭になったため、まもなく移転されるとのこと。それでも新しい事務所の家賃は月25万円。しかも入居先は、ショッピングモールの中です。

ここから何を学べるか

本部経費は、売上ではなく「現場の納得感」から逆算する。これは規模を問わず効く考え方です。社長の車、事務所の内装、本部の人数——それらは現場のスタッフから、常に見られています。「これは、現場に説明できる支出か」。この一問を通すだけで、経費の質は驚くほど変わります。

「3年以内に、100億」——そして、誰と一緒にいるか

鶏ヤローの店頭掲示
「うまい、やすい、うるさい。鶏ヤローはそんなお店です。」——店頭の一枚に、業態のすべてが凝縮されています。

最後に、これからの展望を伺いました。「あんまり10年後とかは考えていないんですけど」と前置きしつつ、今期65億円、そして3年以内に100億円という数字を挙げてくださいました。

なぜ100億円なのか。その理由がまた、実に具体的でした。

50億から100億の会社って、実はけっこういるんですよ。皆さんが知っている居酒屋チェーンって、だいたいそのくらい。でも100億を超えると、急にいなくなる。居酒屋でいうと、甲子園に出るくらいの確率——5,000分の1くらいじゃないですかね」。

そして、この日いちばん静かに、会場に沁みた言葉がこちらでした。

「その人と一緒にいたら、『こいつができてるなら俺にもできるな』っていう感覚になるじゃないですか。だから、誰と一緒にいるかって、めっちゃ重要だと思うんですよね」

——これはまさに、この協会が存在する理由そのものです。一人で考えていたら「無理だ」で終わることが、すでにやっている人が目の前にいるだけで「できるかもしれない」に変わる。今回ご参加くださった皆さんは、その感覚を持ち帰ってくださったのではないかと思います。😊

ここから何を学べるか

目標は、市場の分布を知ってから立てると現実味が出ます。「50〜100億は多いが、100億超は激減する」という肌感覚があるから、100億という数字に意味が宿る。そして「誰と一緒にいるか」。学びの量以上に、環境が人の限界値を決めてしまう——だからこそ、外に出て、先を行く人の隣に座ることに価値があります。

会場そのものが、教材だった

今回とても贅沢だったのは、お話を伺った場所が、そのまま鶏ヤローの店内だったことです。

天井から吊るされた提灯。壁一面を埋め尽くすメニューのポスター。「うまい、やすい、うるさい。」という店頭の一枚。価格を看板にドーンと出すという話も、わかりやすさが命という話も、顔を上げれば実物がそこにありました。

そして店内には、こんな掲示もありました。お客さまは神様ではない——スタッフはお客さまに仕えるためだけの存在ではなく、店にとって一人ひとりが大切な存在なのだ、という意思表示です。「うちの店長みたいになりたくない」と言われたあの日から始まった理念が、店の壁にまで貫かれている。言っていることと、やっていることが、隅々まで一致している。これこそが、この日いちばんの学びだったかもしれません。

懇親会まで、大盛況

鶏ヤローの鍋料理
鶏ヤローの唐揚げ
鶏ヤローの出汁巻き玉子
鶏ヤローの一品料理

第2部の懇親会も、そのまま「それゆけ!鶏ヤロー!新宿西口店」で🍲

勉強会のあとは、同じ会場でそのまま懇親会へ。名物の鍋、揚げたての唐揚げ、大きな出汁巻き玉子——価格の話をさんざん聞いた直後に、その価格で出てくる料理を実際にいただく。これ以上に説得力のある懇親会はありません。😊

勉強会の熱がそのまま続き、業態や立場を越えた相談や名刺交換が止まりませんでした。和田社長を囲んで自店の課題を直接ぶつける方、「うちの立地でこの価格帯はどうだろう」「まず理念を短くしてみよう」と、その場で自店に当てはめて語り合う方——あちこちで新しいご縁が生まれていました。

こうして第3回も、最後まで大盛況のうちに幕を閉じました。「10年続く飲食店経営」を、これからもみんなで一緒に。次回の月例会も、さらに学びの多い時間にできるよう準備を進めてまいります。どうぞお楽しみに。😊

そして、会場をご提供いただいたうえに、失敗も本音も惜しみなく分かち合ってくださった和田社長に、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

▶ 登壇いただいたゲストの企業情報
株式会社鶏ヤロー(代表 和田 成司 氏)/居酒屋それゆけ!鶏ヤロー!

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